琥珀精靈夢
MLCR-0002
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僕らが通っていた學校には大きな樹があった。 そして、“彼女”はその巨木の精霊だった。 昔の話だ。 丘の上、學校の裏手に大きな樹があった。 そこで不思議な少女と出會った。 その少女は自分のことを “いぶき” と言った。 枝から落ちそうになった俺を、まるで空を飛ぶような身の軽さで助けてくれた。 その後、仲良くなった俺たちは學校の裏庭で度々出會うようになり、幼いながらもいつしかお互いに惹かれ合っていった。 そんなある日、ちょっとした事件が起きた。 都市計畫に沿って大規模な再開発が行われることになり、俺も含め周辺に住んでいた人々は皆、住み慣れた土地から離れることを餘儀なくされてしまった。 引越しを終え、新しい土地に落ち著いた俺は、少女の行方を捜した。 しかし、再び會いたいという願いは、葉えられることは無かった。 ……時は流れ、そんな過去の出來事をすっかり忘れてしまった頃、通學のため俺は懐かしい町へと戻った。 かつての幼なじみたちと集まり、思い出の場所を訪ねて回っていた時だった。 學校の跡地、校舎の脇にあった巨木が姿を消していた。 再開発のため切り倒されたのだろうか。 満たされない、奇妙な感情が俺たちの胸に渦巻く。 ――翌朝。 丘の上、かつて通っていた學校の脇に生えていたはずの巨木が、そこに生えていた。 そして、その巨木の枝の上には、一人の少女の姿があった。 俺の姿を認め、少女はつぶやいた。 「あ、広幹…… やっと來たんだ……」